驚くほどのお風呂の事故や病気!事故原因の3つの危険性とは!?基準としての42度、対策をまとめ

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習慣や慣れが原因?意外と意識しないお風呂の危険性

 
お風呂の危険バナー

 
日本人では多くの人がお風呂でバスタブに浸かります。保温や血行を促し、リラックス効果、翌日に疲れを残さない健康効果や心地よさは体感として感じているもの。湯治という言葉があるように昔からお風呂(銭湯、温泉)に入る事で病気や怪我を治してきました。
 
日本ほどバスタブにゆっくり浸かる習慣・文化が浸透している国は珍しく、海外ではトイレとバスタブが一緒だったり、バスタブのお湯は身体を洗うためのものという概念で使われている国もあります。

 

たまたま取引先の中国の人とSKYPEする機会があったので印象を聞いてみると、

 

 
30代女性似顔絵

お湯をためるのは贅沢
お風呂の事故が怖い

 

 

・・・という
日本人にはあまり出てきそうにない言葉がポンと返ってきました。

 
気候の熱い国の人では「熱いお湯に入る」概念がなく

お風呂の熱さや湿度が嫌い

というような人もいます。
 

このようなお風呂に対してマイナスな意見もある中、何故、日本でバスタブのお風呂が浸透したかという要因を考えると、ある程度納得できる理由を導き出せる事にも気づきます。
 

火山国で古来より温泉が湧き出ている
気候では温暖で湿度が高い事に慣れている(←「熱さや湿度が嫌い」が解決)
水資源が豊富(←「お湯をためるのは贅沢」が解決)
経済的に成長している(←「お湯をためるのは贅沢」が解決)
綺麗好き

 
やはり日本以上お風呂好きな条件が整いそうな国もそうそうなさそうですね。

火山国日本
 

今回は「事故」というキーワードに目を向けて解説します。

 
海外の人が怖いと言ったお風呂の事故。
 
驚きの数字が、日本で年間5000人近くの人がお風呂場で溺死していること。

疾病や入浴起因を含めると年間約 1 万 9,000 人の方が入浴事故で亡くなっています(※)。
 
(※)厚生労働省の研究班の調査。救急車で運ばれた患者数から推計したお風呂場の事故数より
(交通事故で亡くなる方の年間4000~4500人と比較して4,5倍近くの人数)

 
入浴事故死者数グラフ

 
 

事故死者の年齢は65才以上のご年配の方が9割を占める事や血圧の上下が関係するので、どうしても「年配の方」「疾病のある人」の事故というイメージが強くなりがちですが、若い人なら安心というような問題ではありません。残った一割を単純に概算すると年間500人が溺死でなくなっており、疾病や入浴起因まで含めると年間1900人まで亡くなっている可能性があります。夏に海やプールなどの水の事故で亡くなる方は年間700-900人(政府広報)と比較すると、低く見積もっても同程度以上の危険性はあると認識しておいた方が良いでしょう。

 
次に説明しますが湯温42度という中途半端な数字が実は意外と危険な数字である事。昔から薪でお風呂を沸かしていたり、銭湯に行っている日本人の習慣(もっと高い温度)からすれば考えにくい事です。
 

何故たくさんの人が亡くなっているのか、具体的にどのようなお風呂の危険性があるか、掘り下げてみたいと思います。

 
 
引用元:平成28年1月20日消費者庁 冬場に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!
 
 
 
 

基準としての42度 41度以下10分以内の入浴という指針

まずは湯温です。
 
温度の熱いお風呂は最初入った時に血圧が上がります。熱い目安と言われる42度以上の湯温のお風呂に入っている方は4割程度いらっしゃるようです。(インターネット55才以上の方への意識調査)
 
お風呂の温度と時間を意識しているかのアンケート結果図

 

 
血圧が上がるのは熱により身体がびっくりして血管が収縮するのが原因で、交感神経も活発になります。高血圧の人にとっては脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上がりあまり良くありません。
 
 
 
消費者庁では「41度以下10分以内の入浴が目安」と指針を設けています。
 
 

お風呂の危険1 血圧が下がる危険

 
熱いお風呂が問題なのは、入浴中血圧は上がった後に今度は下がり始めます

 
NHK血圧変化グラフ

引用元:NHKためしてガッテン お風呂大変身! 超快感・安全入浴術
http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20090128/index.html

グラフを見ると、38度の湯温ではなだらかであまり下がらなかったのに対して
42度の温度は血圧が急激に下がっている事が分かります。結果38度で入浴するより20mmHgも血圧が低くなりました。

 
 

理由は人間の身体の仕組みとして上がった血圧を下げようとする働きが1つ
もう1つは熱いお風呂に入った際、身体は真っ赤になりますが、これは抹消の血管まで血液が集まっている証拠で抹消の血管が開くと、今度は身体の隅々まで血液が流れやすくなるため血圧が下がります。

 
 

1.お風呂で血圧が「下がる」危険

この一度血圧が上がった振り幅からの急激な血圧低下は、脳に血液が行きにくくなり意識障害(失神)を起こしてしまう事があります。

そして意識障害の際に肺に水が入り、そのショックが引き金で心臓が止まるこの「溺死」「心臓発作」というケースが非常に多い事が分かってきています。

 
入浴時と入浴起因、疾病と事故という要因を区別するのは統計的に難しいですが、今まで入浴事故の大きなイメージだった血圧が上がることによる脳梗塞、心筋梗塞がはっきりと原因と分かっているケースはわずか1割程度とされます。(⇒NHK お風呂大変身! 超快感・安全入浴術)

 
 
お風呂で気を失う事がどれだけ危険かは、疾病があるなし老若男女関係ありませんね。そして、ここで並行して思い出しておきたいのは立ちくらみです。
 
 

お風呂での立ちくらみ

起立性低血圧と呼ばれ立ち上がった際にクラクラとなる症状。

お風呂で血管が広く流れやすくなっている状態で相対的に頭も血圧が下がっているのに、立ち上がると同時に一気に頭の血流が少なくなって貧血状態になり失神してしまう事があります。重篤な失神につながりやすいお風呂では急に立ち上がってはいけません

 
 

若く健康な成人男子の場合

 
ある身近な例では、20代の男性が銭湯でお風呂から上がった際に大の字に倒れてしまったという人もいます。倒れる際は身体を防御する時間すらなく、数分間そのまま大の字でした。

ぼんやり意識はあったそうで銭湯だったから周りの人が「救急車呼ぼうか」と声かけてくれたのはありがたい事です。大勢の人の前で裸で大事な所がかくせず恥ずかしかったと笑い話にもしていましたが、だからこそ意識はあっても身体が動かないのが怖さと驚きというのは伝わりました。

前兆があれば、多少かがむなりガードしますよね。事故というのは予測できないから怖いと思います。
 
 

お風呂で一度「危険」を感じた人に対するアンケートによると、約30%が「浴槽から立ち上がった時」を解答しており一番多い解答率となっています。
 
お風呂危険なタイミングアンケート図

引用元:平成28年1月20日消費者庁 冬場に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!
 
 

お風呂の危険2 温度差と血圧変動で身体への負担

 
お風呂で失神のリスクがふえるのが「血圧下がる要因の危険」とすれば
脳梗塞心筋梗塞などは「血圧上がる要因の危険」と言えそうです。
 

2.お風呂で血圧が「上がる」危険

お風呂で(お風呂の前後で)血圧が上がるのは、身体が熱や寒さに反応し血管が収縮するからであって、高血圧+疾病のある人にとって、血管が詰まってしまう病気の代表格、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。

寒暖差が大きければ大きいほど血管が収縮しやすく、場合によれば心臓に大きく負担がかかってしまう事もあります。

 
寒い浴室と熱いお風呂の温度差、熱いお風呂と寒い脱衣所の温度差も血圧の上下があり、要因が重なると身体に負担がかかります。
 
 

入浴前後は特に寒暖の差に注意

 
夏に冷たいプールに温水プールと思って飛び込んだら心臓麻痺や苦しくてまともに泳げない危険がありますね。プールに入る際に足や指先から「身体に冷たさを慣らして」入るように、お風呂も心臓に負担がかからないよう足先、指先からかけ湯をしてゆっくり入るのが正解です。
 

真冬にブルブル震えるようなタイル張りの一番風呂は、先にお風呂の蓋をあけて温度差をなくしておかないと、寒さで血管が収縮するので血圧が上がり心臓に負担がかかってしまいます。
 
その後、お風呂上がりの脱衣所で、またブルブル震えて身体をふかないといけないというように、血圧の短期間の上下要因が揃っているのがお風呂なのですね。

 
体感温度差の多くなる冬にはお風呂の事故が多くなるのも大きな特徴です。
 
お風呂の温度差冬の事故が多い図
 
 
 

お風呂の危険3 のぼせ、脱水症状、様々な要因を誘発する高い温度での長風呂

そして忘れてはならないのは、長い時間のお風呂です。最初は湯につかる身体が温まって、すぐには頭は温まりませんが、高温で長い時間お風呂に入り続けると、頭も血流がはいり「のぼせ」という状態になります。
 
 
「恋愛でのぼせる」という日本語の表現が「恋愛で燃える」イメージで勘違いがあったり、「カッとして頭に血が上る」というように、血圧が高くなるイメージあります。
 
湯温があまりにも高いと交感神経が高くなって頭に多く血が登って頭の血圧が高くなっている可能性がありますが、基本的には全身の血管が開いて低血圧と理解しておきましょう。のぼせると、ボーっとしてしまいます。
 
のぼせのような意識障害はひどくなると失神や、体温が湯の温度まで上昇し、熱中症になる可能性もあります。

 
 
寒さにより一度血管が収縮してからの高い温度での長風呂。反動もプラスされ普段に比べて過剰に血液が流れる事は、例えば疾病、加齢、運動不足などにより血管がもろくなっている部位に負担がかかり出血するというケースも考えられます。
 
 

3.「高温で長い時間」浸かる危険

高い温度での長風呂により、のぼせてボーっとした意識障害が起こると失神の危険性を高め、湯から上がる判断も遅れ脱水症や熱中症になる危険性も加わります。

「寒暖差」+「高い湯温」+「長い時間の風呂」・・・というのは身体にかかる負担が増え、各症状の重くなってしまう要因の一番大きいものでしょう。

 
 
お風呂での「危険」を感じた人に対するアンケート、状況の項目では「浴槽に長く浸かっていた」が一位となっています。
 
お風呂危険状況アンケートの図
 
 

 
 

理解しておくべきお風呂場3つの危険

  • 血圧が「下がる」危険
    (お風呂の温度で血圧が下がる仕組み。失神要因による溺死、心臓発作。立ちくらみは失神の要注意)
  • 血圧が「上がる」危険
    (寒暖差で血管が収縮し心臓への負担、脳梗塞や心筋梗塞)
  • 「高温で長い時間」浸かる危険
    (各症状を重くする)
  •  
    ・・・以上、大きくまとめると3つの危険をピックアップしました。
     
    38度のお湯と42度のお湯で血圧上下の振り幅が全然違ったように、ひとつひとつが単体ではなく、相乗して身体に大きな影響を与えるのがお風呂場の事故の怖さです。体調が悪い時、飲酒、睡眠不足など、普段や元気な時だと小さく思えるような症状も重なると大きく影響します。
     
    お風呂習慣としてリラックスする良さを楽しみながらも。プラスして危機意識を持っておきたい所ですね。
     

     
    勘違いしやすい問題としては、

    食後1時間以内の入浴も全身に血液がいってしまって胃腸の運動が止まるなど身体に負担がかかるので非推奨です。

     

     
     
     

    お風呂習慣の悪い例

     

    お風呂で血圧上下が大きい流れ

  • 朝風呂(朝起きて活動開始により血圧低⇒血圧上がる 寒暖差も大きく感じやすい)
  •  

  • 飲酒後の入浴(※1)
  •  

  • 寒い浴室(体温を逃がさないよう血管が収縮する。血圧上がる)
  • 熱い風呂(熱でびっくりして血圧上がる)
  •  

  • 入浴中(全身に血液が流れ血圧が下がる。)
  • お風呂で急に立つ(脳に血液が流れない。)
  • 血液促進作用がある入浴剤使用。血圧下がる
  • 食事後1時間以内の入浴(※2)
  • 飲酒中の入浴
  •  

  • 高温で長い時間の入浴(脱水症、熱中症の危険。のぼせ、意識障害の誘発)
  •  

  • 寒い脱衣所(水分が肌にある体感的な寒さ。血圧上がる)
  •  
     
    (血圧が上がる ⇒ 脳梗塞、心筋梗塞の危険)
    (血圧が下がる ⇒ 意識障害(失神)要因の溺死、心臓発作の危険)
     
     


    ※1
    入浴の血液循環によりアルコールが身体にまわります。眠気、酔がまわって気分が悪くなるなど。脱水症状の助長。身体に大きく負担がかかります。飲酒の場合、お風呂に入る前に既にある程度血圧が下がり、裸で寒い浴室に入った際急激に血圧が上がるなど振り幅と振り回数も増え危険そうです。


    ※2
    入浴により血液が体表に集まり、胃腸の血液循環が悪くなり胃液の分泌、胃腸の運動が止まります。食後にめまいなど起こす食後低血圧になる人もいます。非推奨なのと、どちらかというと血圧は下がる分類とさせてもらいました。

     
     
     

    お風呂の血圧上下と安全対策まとめ

     

    ■入浴前

  • 浴室:お風呂に入る前に、お風呂の蓋をあけて浴室を温めておく。熱いシャワーをかける。
  • 脱衣所:ストーブで温めておく。すぐ身体をふけるように手元にバスタオルや衣服を用意。
  • 脱水症状対策にコップ一杯の水を飲む
  •  
     

    ■入浴中

  • 湯温は41度で10分以内など、入浴の温度と時間を意識する(湯船に浮かべる温度計が正確)
  • 「足先、手足など心臓に遠い位置」からかけ湯をする。「足先、手足など」からゆっくりお湯につかる
  • お風呂から上がる際はゆっくり立つ
  •  
     

    ■その他

  • 朝風呂はしない。特に冬。
  • 食事後1時間以内の入浴は避ける
  • 「入浴の後」に食事、アルコールの習慣を
  • 血液促進作用がある入浴剤使用の場合は湯温を下げる
  • 入浴する前に同居者に一声掛けて見回ってもらう※3
  •  
     
    ※3
    銭湯の方が高温で長く入る人も多いかもしれませんが、銭湯や公衆浴場は、万が一の際に助けがいますので心臓麻痺の事故割合が家庭より低いデータもあります。一人暮らしの方はタイマーをかけるなど工夫をしましょう。

     
     
     
    書くと多いですが、寒暖差による血圧の上下の仕組みを理解したら対策はシンプルですね。できることから是非やっていきましょう。
     
     
     

    まとめ

     

    これまで
    血管が収縮
    心臓に負担
    失神
     
    ・・・というような内容を書いてきました。
     
    想像すると苦しくてお風呂に入ってられないですよね。

     
     
    しかし、具体的に42度という数字を挙げましたが、温度自体が単体で危険ではなく、ちょい熱程度で高温というイメージもないため長風呂を誘発してしまったり、給湯器も進化しているのでボタン1つで簡単に追い焚きできるようになっていたり油断はしやすいという事の方が問題でもあるでしょう。
     
     
    お風呂が危険なのは要因が重なる時なので、知識を理解していると事故の要因を多く減らす事ができます。
     

     
    ここでお風呂に入るのをやめてしまっては「危険だから入らない」という海外の人の意識に通じるかも?
     
    お風呂の健康効果を知っている日本人ですので、最後にフォローもかねて高い温度のお風呂の魅力に関してもお伝えします。
     
     

    熱いお風呂の魅力

     
    銭湯では47度くらいの熱い湯もあります。特にお父さん世代、男性に多いイメージなのですが、これくらい熱い風呂が好きという人もいますよね。
     
    47度の熱い湯に入った人の血液を調べるとB-エンドルフィンという物質が増えるそうです。これは脳から分泌されるモルヒネの一種で、熱いお風呂が好きな人になるというのはこのためだと考えられています。
     

     
     

    HSP入浴法

    週に2回、42度の高めの温度で入るHSP(ヒートショックプロテイン)入浴法もあります。これは熱によって身体を修復するタンパク質が増え身体を強くする働きがあります。オリンピック選手にも採用されるようなロジックがしっかりある入浴法で、寒暖差対策はこちらからも参考にさせていただきました。

    http://www.youko-itoh-hsp.com/hsp%E5%85%A5%E6%B5%B4%E6%B3%95⇒HSP入浴法:公式サイト

     
     
     
     
    運動のようにある程度の負荷や刺激が身体を丈夫にするとすれば、全部のリスク排除、全て低刺激でいきましょうというのは、もしかしたらある人にとってはマイナスの原因になるかもしれません。
     
     
     
     
    自分の体調に注意しながらその人にとっての適度があるはずなので、「41度10分以内が推奨」という知識とともに自分にあったお風呂の入り方を見つけていく事ができれば良いですね。

     
     
     

    Writer:mizobata
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